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本当は恐いグリル童話U

7
ニセレブの喧嘩
 
 
バンブー・マッタクバッテン卿とシリー・デ・セレブル夫人は仲の良い友達どうしでした。
その二人が、ある日ついに喧嘩をしてしまったのです。
きっかけは見事なガラス細工と前衛的な歪んだ形の陶器のオブジェのどちらを王室へ贈るかということでした。
 
それまでは気があっていたのですが、些細な違いで酷くののしりあうようになりました。
正統派と自分では思っているマッタクバッテン卿は男の子が王冠を捧げ持つガラスの像を手に持ち、他のはマッタクだめだ、バッテンだと言って譲りません。
他人のいうことなど聞く気のないセレブル夫人はくねくねとうねる奇妙な形の、何をあらわしているのかさっぱり解らない、ゴテゴテと飾り付けられた陶器を抱えて「あーた、あたくしを脅す気?」と怒っていました。
こともあろうか町の広場でこんな喧嘩を始めたのでした。
 
しばらく揉めているうちにガチャンという音がしました。
セレブル夫人があまりに陶器を振り回すものですから飾りが割れて落ちてしまったのです。頭に血が上った夫人は陶器をもっと振り回すとマッタクバッテン卿に向かって行きました。
危険を感じたマッタクバッテン卿はつい手に持ったガラスでそれを受けてしまいました。
 
ガッシャン、と大きな音を立ててガラスも陶器も粉々に砕けました。
 
後に残ったのは傷をいっぱいつくったマッタクバッテン卿とセレブル夫人、それと小さな破片になった二つの元オブジェだけだったそうです。
 
 
※バンブー・マッタクバッテン卿…王族の遠縁で普通の民ですが、自分では卿とつけて呼ばせている。
※シリー・デ・セレブル夫人…偉い人の奥さんでしたが、今はただの変わったおばあさん。

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Last updated: 2012/6/25