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本当は恐いグリル童話U

3
民に寄りかかる心
 
 
王は民が自分に会いたいのでは、と考えられ周りが止めるのも聞かず民の元へ行くことにしました。
民がどれほど喜び、王を褒め称えるかを考えるとわくわくするのでした。
 
「チッ、忙しいのによ」
「警備の人手も足りねーんだよ」
「ほこりが立つからじっとしてろってさ」
 
人々は王のおいでを様々な思いを持って迎えたのです。
王は満足しました。
「みな、あのように騒いで喜んでおる」
「もちろんですわ(だってわたくしがいるんですもの)」
スモールソーサー后も満足しました。
そうして宮殿に戻るとコレクション用のピンを地図に一つ刺すのでした。
 
 
それを見てアキシーノ公爵とゴッキ夫人も民の元へ行くことにしました。
きっとみんな涙を流して喜ぶことでしょう。
 
黒塗りの馬車で民の元へ出かけて見ると、思ったほど人がいません。
「カソというのかな、ねえ」
「はい、もちろんしょうでごじゃいましゅう」(ニタニタ)
 
たまに居る人は忙しく働き、畑の作物に虫がいないか、家に汚れはないかなど調べていました。
「わたしたちを探しているのかな、ねえ」
「はい、ここにおりましゅのにねえ」(イヒヒ)
そしてヒワイビッチやタカ・シュミーズが褒め称えている姿を想像し、さらにニタニタ、イヒヒと笑うのです。
 
まもなく公爵夫婦は民と会うための集会所につきました。
10名ほどの民がきちんと並べられたテーブルに座って公爵夫婦を迎えました。
公爵は首を縦に揺らしながら「このあと異国の風変わりな動物を見に行こう」と心に決めました。
夫人は「ディナーはエビかしら?カモかしら?」などと考えイヒヒと笑っておりました。
そして民は「畑の収穫がしてぇ。早く終わらねぇべか」と思っていたのです。
 
のちにナール王子とマーサ妃への民の歓迎ぶりを知り、ゴッキ公爵夫人は泡を吹くかと思うほど怒り狂ったのでした。
 
 

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Last updated: 2012/6/25