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本当は恐いグリル童話U

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GREEN−EYED MONSTER---塩キャンディを舐めながら

 
キャンディー・ド・ハゲ・ニッシーオはその男を待っていました。
扉が開くとニッシーオは男が座る前にしゃべりだしました。
「大変なんだ」
「チウゴクが攻めてくるんですよね。ちゃんと対策をしていますから安心してください」
「違うんだ。恐ろしいことが起きているんだ」
「今度は何が起きているというのですか?」
男は努めて冷静に聞きました。
「ソレイユが滅びるんだ。何もかもめちゃくちゃになってしまうんだ」
「そうですか。それは本当に大変ですね」
「早く手を打たないと間に合わない。俺だけがそれを知っているんだ」
「はい、わかっていますよ」
言うや男は注射器を手にしニッシーオの腕に針を刺しました。
「なにをしてるんだ。急げ、ソレイユが壊れてしまう」
「わかっています。すぐに効きますからね」
男は興奮するニッシーオを置いて部屋を出ていったのです。
 
重い扉を閉めた男はとても深いため息をつきました。
「先生、いかがでした?」
白衣を着た看護師は問うと医者である男は応えました。
「あれはいかんな。手の施しようがない。自分の妄想の世界から出ることができないようだ」
「ではこのまま?」
「そういうことになる」
「学者と言うことですが、それも妄想なのでしょうか?」
「いや、学者は本当だが…過ぎたるは及ばざるがごとし、ということかな。あれでも電波ゆんゆん大学の名誉教授なんだが、考え過ぎておかしな方へ向かってしまったんだな」
「そんな偉い方とは思えませんね」
「偉いといっていいのかな?知識に知恵がついていかないというか、優れた人を目の前にし、おのれがその優位に立てないことを認められず、嫉妬によって正常な意識に歪みを生じ、妄想とねつ造、いや正確には現実を自身に都合よくすり替えてしまい、それを真実と信じこもうとする。そしてついにはあんな風に…」
首を横に振って医者は歩き出しました。看護師はその後を足早についていきました。
 
二人の後方の鉄格子の入った病室のニッシーオが叫んでいる声がむなしく響きました。
「大変だーっ、俺の言うことを聞けーっ…ムニャムニャ…」

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Last updated: 2012/6/25