これは秘された物語です。
誰がいつ書いたかもわからない話です。
あるところに少々がめつい母キツネとでれすけの父ナマズがおりました。どうしたわけか、この夫婦の間には3匹の子ブタが生まれたのです。
キツネは自分たちよりも身体が大きくなる子どもたちに家をもたせようと考えましたが、自分の財布からお金を出すことが嫌いでしたので、子供たちに自分で家をつくるようにいいました。
一番目の子ブタは面倒なことが嫌いでした。適当に藁を集めて家のような形にしました。
家ができると嬉しくて遊び回っていました。
そこへ狼が現れて一緒に遊んでいると、藁のなかのクモの巣に火がついて藁の家は炎上しました。
一番目の子ブタは口を火傷しアヒルのようにすぼめて逃げ、何もなかったように家に戻りました。
二番目の子ブタはもう少し上手くやろうと思いました。
仲間の子ブタたちに言いつけて木の枝をもってこさせたのです。子ブタたちは働いたのだからエサをくれと言いましたが何も貰えませんでした。
二番目の子ブタは木の枝で家をつくったら餌をやると約束しましたが、家ができると子ブタたちを追い払ってしまいました。子ブタたちに、カツにして揚げるわよ、と脅したために子ブタたちは泣きながら親ブタの元へ帰ったのです。
二番目の子ブタは家ができると嬉しくて腰を振って踊っていました。
そこへ子ブタたちの親がやって来て、えさの代わりに木の枝をもって帰ってしまいました。後に残ったのは踊り狂う二番目の子ブタだけでした。
仕方ないので二番目の子ブタは、何もなかったように家に戻りました。
そして三番目の子ブタの番になりました。
この子ブタはまだ小さくとても心もとない子でしたので、母キツネは自分で三番目の子ブタのために家を建てようと考えました。
上の二匹のブタのような家ではすぐに壊れてしまうので、とても丈夫なレンガで家をつくろうとしました。
たくさんのレンガをつくらせて三番目の子ブタのまわりに一つずつ積んではセメントでしっかりと固めていきました。
子ブタのそばにらせん階段を一つ付けて2階建てにしました。
屋根までしっかりとレンガを組んで一息ついた母キツネはハッとしました。
うっかりして戸口も窓も一切つくらないままレンガを積んでいたのです。
どんなにゆすってもレンガの家はびくともしません。屋根にわずかな隙間を見つけ、階段で登らせようと思いましたが、らせん階段は壊れてしまっていたのです。
そのため三番目の子ブタの姿は誰にも見られないままに今もレンガの家にいるのです。
「こんな変な物語、大切なアイコディーテ姫に読んで差し上げられないわ」
メイドはパタンと本を閉じると急いで地下へ向かい、奥の奥の奥にその本をしまいました。
それ以降この本を読む者はいなかったということです。
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