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本当は恐いグリル童話U

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ソレイユ七不思議
 
 
朝早く広間へ出てきた若いメイドの一人が別のメイドにいました。
「夜、目を覚ましてちょっとそのあたりを歩いていたら変な音が聞こえたのよ」
「変なってどんな音?」
「ヒューとか、カーゴとか聞こえるんだけど」
「ついに聞いちゃったのね。それはソレイユの七不思議よ。あなた、入って間もないから知らないのね」
若いメイドはごくりと生唾を飲み込みました。何やら不穏な空気を感じたのです。
やっとのことでついた仕事にこんな不思議があるとは思ってはいませんでした。
 
「このソレイユの王宮には昔からいくつもの不思議があるの。その時々で内容が少しずつ変わっていくんだけど、あなたの聞いたのは昔からあるものよ。細い小さな声で歌う子守唄が聞こえるの。他にも『アヴェ・マリア』のヴァリエーションがあるわ」
「子守唄?小さな子どもなんていないのに?」
「そうよ。ほかにも夜中にシャリシャリという音が聞こえる『リンゴ剥き』やお嫁に行ったはずのサーヤ様の姿が見えるとか、いつの間にか消えてしまうマーサ様の席、使われない客室とかね。最近では厨房に現れる小さな男の子、なんてのもあるわ」
「えっ、それって不思議じゃないでしょう…」
「あなたに一つ言っておかなきゃね」先輩のメイドは教え諭すようにいいました。「七番目の不思議はいつの時代も変わらないものなの。それはね、六つの不思議をすべて解き明かした者は首を切られてしまうのよ」
「きゃああ〜っ」
 
就職難のご時世のとても恐ろしい話にメイドの背筋が凍ったのでございます。

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Last updated: 2012/6/25