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本当は恐いグリル童話U

22
アヤソフィア(聖なる知恵)
 
アイコディーテ姫はそっと書庫の扉を開きました。
静かで整然と本が並ぶこの場所は特別な智慧の詰まった場所だと思っていたのです。
本棚にはナール王子のものだけではなくマーサ妃の本も並んでいます。どれも難しい内容のものですがアイコディーテ姫はそのうちの一冊を手に取りページを開きました。
 
「いつかお母様のようにすらすらと読めるようになるかしら。そのためにはいっぱいお勉強をしなくてはいけないわね」
カントの哲学書を静かに閉じ姫は少し前のことを思い出していました。
 
それはブルーギル王の元に王族が集まり新年のご挨拶をしたときのことです。
アイコディーテ姫はマコリンペリーナとカコポリーナ少しばかり言葉を交わしました。
その時に公爵家の姉妹の会話を聞いて不思議に思ったことがあったのです。
初めにカコポリーナがマコリンペリーナにいました。
「お姉さみゃ、少しは勉強ができるようになった?」
「できるわよ。ちゃんと高等学問所に行ってるんだからね」
「じゃあ、3×4はいくつ?」
「…じゅっ、じゅっ…14よ」
「…さすが…お姉さみゃね」
「あれはきっと8進法ね。上の学問所に行くと色々習うんだわ。もっと難しいことをたくさん勉強したらお母様のようになれるわ。はやくアイコディーテも上の学問所へ行って勉強したいな」
 
そんなことを思い出しながらカントを書庫に戻しました。
 
アイコディーテ姫はたいそうかしこい姫君でしたがそれでも知らないことがありました。
実はマコリンペリーナとカコポリーナが想像を絶する出来の悪い生徒であることを知りませんでした。
ですから「3×4=14」を8進法と思い感動なさっていましたが、計算できないマコリンペリーナと正解を知らないカコポリーナをすでに凌駕する能力を生れた瞬間からお持ちであると気づいていなかったのです。
 
姫は異国のカードに関する書物を手にされ書庫を後になさいました。
「今日はこのカードについて教えていただきましょう。絵と歌が書いてあるのね。面白そう」
黒曜石の瞳をキラキラ輝かせて姫はご両親の待つリビングへ急ぐのでした。
ナール王子とマーサ妃はきっと歌の意味やそれが作られた背景などを教えて下さるでしょう。
そしてアイコディーテ姫は多くを学ばれるのでした。

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Last updated: 2012/6/25