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本当は恐いグリル童話U

妖精のルンペルシュティルツヒェン その2
 
妖精が服を引っ張ります。
 
ところがマコリンペリーナは動きません。
王子のことを思い出したのです。
 
「わたい…別の願いがあったんだぁ。そっちに替えるぅ」
 
「おじいさみゃとやらに頼んでも無理だね。
妖精は人間とは違うんだ。
一つと言ったら一つだよ」
 
「いやだぁ、おじいさみゃに言いつけてやるぅ」
子どものように手足をばたつかせ叫びますが妖精も意地になっていました。
興奮したマコリンペリーナは妖精の胸ぐらをつかむとぶんぶんと振りました。
はずみで服の裾はマコリンペリーナの重そうなお尻から抜けましたが、妖精自身はくらくらしてきたのです。
 
 
そこで少々妥協することにしました。命は惜しいですからね。
 
「夕ご飯までにおいらの名前がわかったらもう一つの願いをかなえてやるよ」
 
「夕ご飯までなんて無理ぃ~」
 
「肉を食べるんだろ?じゃあ夕ご飯までに帰らなきゃな」
 
何となくマコリンペリーナは納得しました。
お肉を食べることは大切なことだったのです。
 
「名前はねぇ~、ウミヘビかなぁ?」
 
「違うよ(この子、バカなのか?)」
 
「じゃあねぇ~、サーモン?唐揚げ?トンコツ?」
 
「…(並のバカじゃないな)」
 
「わかんないよぉ〜」
 
苛立ったマコリンペリーナは両手両足をぶんぶん振って怒っています。
その手足がばんばん妖精にぶつかりました。
 
「教えろぉっ。おじいさみゃに言いつけるぞ」
 
妖精もさっさと帰りたかったので、最大限の妥協をすることにしたのです。
地面に名前を書いてそれを見せました。
 
「ツ?ル?…ルンペ…ルぺル…?」
 
「ルンペルだよ」
妖精はちょっとムッとしていました。
 
「ルンペル…チュ?チュテン?」
 
妖精の目はまん丸になりました。
そういえば噂で聞いたことがあります。
公爵家の娘はとてもおつむがムニャムニャだと。
きっとこの子がそうなんだろうかと思うと少し可哀そうになって妖精は大判振る舞い、出血大サービスです。
 
「ルンペルシュティルツ…ついでにそのあとはヒェン」
 
「ルンペルツイデニヒェン」
 
「ルンペルシュティルツヒェン」
 
「じゃあ、それ!」
 
ルンペルシュティルツヒェンという名の妖精はもうそれでいいやとさじを投げました。
 
「じゃあ願いをかなえてやるよ」
 
「やったぁー」
 
マコリンペリーナが立ちあがり、おそらく踊っているのでしょうが、身体を揺らし、飛び跳ねました。
そしてくるくる回りながら
「王子ぃー、待っててねぇー」
と叫んで遠ざかって行きました。
 
「願いも言わずに帰っちまった」
 
言ったつもりで安心したのかマコリンペリーナの姿はもう見えません。
お肉といい、王子のことといい、どうでもいいことを妖精に願うなんて馬鹿な子だな、とルンペルシュティルツヒェンは笑いながら地面の中へ消えて行きました。
この願いこそ「おじいさみゃ」に頼むべきことだったのです。
 
 
家に戻るとマコリンペリーナ用に特大ステーキが用意されており、とても幸せな気持ちになりました。
するとゴッキが甘ったるい声でいいました。
 
「ねえ、マコリンちゃん、エーゲレスに行けばもっとお肉を食べさせてあげるわよ」
 
「ホント?行く、エーゲレスに行くっ」
 
ゴッキはにやりと笑い、エーゲレスに意地でも留学させハタラ・キタークナイ・デ・ゴザールと別れさせてやるわ、と思いました。
 
一方のマコリンペリーナは王子と学問所でずっと一緒にいられると思い込み、心もお腹も幸せいっぱいで何も考えてはいなかったのでした。
 

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Last updated: 2012/9/25