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Bon Appetit

6      第六夜:ロティー:いいカモのロースト こんなアホオランデーズソース

 
 
フンミ・アキシーノ公爵は、あまりおつむの出来が芳しくない方です。
カコポリーナが怒っていても、ヒーソクリフが走っていても平気です。平気どころか自分を良い父親、良い人間だと思っていました。
100歩譲っても「ほろ酔い人間」止まりなのですけれど、それが理解できる方ではありませんでした。
 
今日も美味しい物を食べ、一部の人に褒められとてもいい気分でベッドに入りました。
「ああ、タイトカタイトカタイトカ国に行けたらいいなあ。ヒーソクリフをダシにしていけないかなあ」
などという芳しくない方特有のゆるさで思っておりました。
 
夢の中で公爵は金ぴかの御殿にいました。目の前にはごちそうがたくさんあります。
一人では食べきれないほどの量が並び少しでも冷めると下げられ次の料理が出てきました。
その向こうがわに偉そうな格好の人々がやってきては頭を下げていきました。
公爵は何かお願いをされると馬鹿みたいに頷いてどんなお願いもきいてやりました。考えるなんてしませんでした。
公爵の両脇には美しい女性たちが並び次々にワインを注ぎます。命じればエビやカニの殻も剥いてくれます。
すっかり気分がよくなった公爵は調子に乗ってきました。
「苦しゅうない、3サイズを教えよ」
メイドたちははにかんだ笑顔を見せますが、何も言いません。そしてにっこりと笑って庭の方を見ました。
「あちらにとても美しい方がおられます。わたくしどもなど足元にも及びません」
それを聞くと公爵はじっとしていられなくなりました。庭を見ると確かに美しい方が花を愛でています。
公爵はメイドもワインもご馳走も放り出して庭へと出て行きました。
 
むせるような花の香りのする庭園は迷路のように曲がりくねってなかなかあの美しい方を見つけられません。
一体どれほど歩いたでしょうか。公爵にしては大したものだといってよい時間歩き続け、やっと花の向こうにあの方を見つけました。
おそらく人生で最大のスピードを出し公爵は走りました。もう少しで着くというその時
「なにしてんのっ」
雷鳴のような恐ろしい声がし、公爵は目を覚ましました。
廊下でゴッキが使用人を怒っていたのです。
 
ぼんやりとした頭で夢の女性を思い出そうとするとマーサ妃の顔が脳裏に浮かびました。
あの美しい方はマーサ妃に似ていたな、と思うと夫であるナール王子に対する嫉妬がめらめらと燃え上がりました。
「くっそぅ、綺麗な妻を迎えて、きっとマーサ妃は怒鳴り散らさないだろうし、アイコディーテは賢いし、みんなに褒められてナールばっかり特別でくやしいぃっ」
枕を噛んで羽根を撒き散らして悔しがるばかりでした。
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Last updated: 2012/9/25