「もう、お姉さみゃったら青い顔で一日中鏡を占領して…ちっとも髪のセットができないじゃん。あの鏡が一番大きいのに、ダンスの練習もできやしない」
カコポリーナは不機嫌なままベッドに入りました。姉マコリンペリーナよりも可愛いと自負する自分が鏡を使うべきだと考えていたのです。
「毎日ヒーソクリフを追いかけてマジかったりぃしー、お母さみゃみたいにパンツの履き捨てしたいしー、毎日遊びたいしー」
うとうとしかけた時廊下で騒ぐ声がしました。眠い目をこすって出て見るとヒーソクリフが走りまわっています。その姿をぼんやり見ている父フンミがいました。
「叱れ、叱れ、わたいらはしょっちゅう叱ってたくせにっ」
するとどこからともなく現れたゴッキがカコポリーナにいました。
「さっさと捕まえなさい。そうしたら追いかけっこする仲の良い姉弟ってヒワイビッチに書かせるわ。そして私はすてきな母親と書かせるのよ。イーヒヒヒ」
カコポリーナはしぶしぶ弟を追いまわしましたが、意外にすばっしこくなかなかつかまりません。机の下に潜り込んだり、家具の隙間をすり抜けたりとするうちにカコポリーナは何かにつまずき、ズッテーンと転んでしまいました。
痛みと疲れとで機嫌が最悪になったカコポリーナは地団太を踏んで怒りました。
「アザができたらどーすんの。超ミニドレスはけないじゃん」
どんどんと床を踏みならしました。
「お父さみゃが叱らないからよ」
さらに強く床を踏みながら、まだおさまらないカコポリーナは両手でばんばんと体を叩き出しました。
どんどん、ばんばん、どんどんと音を立てているうちにとても心地よくなりリズムを刻み始めました。どんどん、ばんばん、どんどん、ぽんぽん、ぽんぽこりん…。
気がつくとカコポリーナの顔が丸みを増し、肌の色も黒くなっていました。走っていたヒーソクリフが立ちどまり、指をさして「あ〜う」と言いました。
「タヌキっ」
マコリンペリーナが指をさして笑っています。そっと手を顔に当てるとひげがにゅっと伸びて耳が頭の上の方で立っています。
「ぎゃあああっ」
カコポリーナは叫び、逃げ出しました。走って走って疲れて足がもつれて転び、その痛みで目を覚ましました。
ベッドの下に転落したカコポリーナは腰をさすりながら人間の身体をしていることにほっとしました。
廊下では何かが走る音がします。覗くとやはりヒーソクリフが走っていました。
「叱れ、叱れ」
夢と同じように父フンミに言って、カコポリーナは二度寝をするためにベッドに戻ったのです。その時、手を顔に当てました。夢の中までも怒っていたためかむくんですっかり顔が丸くなっていたのです。
「ぎゃあああっ、タヌキッ」
カコポリーナは頭から毛布をかぶり震えておりました。
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