明け方のすごい声で目を覚ましマコリンペリーナは一日中眠くて仕方ありませんでした。
夢かうつつかぼんやりした意識のマコリンペリーナは獅子の城の王子を探していました。本当は獅子身中の虫の玉子ですが、そのことに気づく頭ではありません。
「早く呪いを解いてほしいよぉ。すぐにお腹がすくのも呪いのせい、カコポリーナに笑われるのも呪いのせいに決まってるしー」
ふらふら歩いていくと鏡がたくさんある場所へ行きつきました。真っ暗な中に鏡だけが光っていて、何枚もの鏡がそれぞれ勝手な方向を向いて立っています。飾りのついた楕円の物や細長い姿見など色々です。
王子に会う前に身づくろいをしようと姿見の前に立ったマコリンペリーナは驚きました。
そこにはすらりとした細身の美少女が立っているではありませんか。
「わたいだわ」と上ずった声でいいました。「わたいの呪いが解けたんだ。本当の姿になったんだ」
嬉しくなり別の宝石の飾りのついた鏡の前に立ちました。するとそこには王冠をつけ赤いローブを身にまとった姿が映りました。
別の真四角の飾りの無い鏡を見ると難しそうな厚みのある本を持っている姿が映りました。大勢の人を前にして難しい話をしています。
「ああ、頭もよくなって女王になって…本当の姿になったんだ。マジ感激」
次々に鏡に映る素晴らしい姿に頬を紅潮させ、まだ足りないというように何度も何度も見ては喜んでいました。
「すごーい、わたい、可愛いじゃん」
あまりはしゃぎすぎてその立派な腕が鏡に当たりました。
一つの鏡が倒れ、次の鏡を倒し、そしてまた次の鏡を…というように鏡は倒れては壊れて行きました。全部の鏡が倒れると辺りはすっかり暗くなり何も見えなくなりました。
「ん…うあ?」
気がつくとテーブルに突っ伏して寝ていました。ほっぺたは手のあとがついて赤くなっていました。
「そうだ、わたいの呪い…」
公爵家で一番大きな鏡まで行くと鼻が付きそうな距離まで顔を寄せてじっくりと眺めました。
「おかしい…パッチリおめめも細いウェストもない…」
マコリンペリーナの顔がみるみる青ざめ、一日中鏡の前で放心状態のまま立っていました。
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