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7
「ばかつや」 月兎
萩原朔太郎 「こころ」より
かつやをば なににたとへん
かつやは 水底のヘドロ
真っ赤に嘘つく日はあれど
バラ色の思ひ出ばかりは せんなくて
かつやはまた 権力の腰ぎんちゃく
声ばかりを あらげてさけぶ
かつやは ひとつによりていたぶれども
こころなき言の葉は いふかひなしや
ああ このかつやをば なににたとへん
かつやは 闇夜の旅びと
されど 道づれのなきまま 言ふことばかりは
わがこころに いみをなさぬなり