アリスは今日も元気に学校へ行って、しっかりお勉強をして、いっぱい友達と遊んだの。いじわるする子もいるけど、頑張って今日も終わり。いつもと同じ、変わりなかった。だけどこの日は学校帰りにちいちゃなネコを見つけた。何だか急いで走っている。ちょっぴり気になって、アリスはネコを見ていた。だって、迷子なら助けてあげないとかわいそう。
そうしたらそのすぐ後を一人の鬚をはやしたメッシュのオジさんが走っていく。
「急げ、急げ、捕まえて?製だ」
びっくりしてアリスは後を追った。猫を助けなけないといけないからね。
ところが、突然ストンと穴に落ちた。ふわふわ、どんどん、どこまでも落ちていく。上か下かわからないけど、ゆっくり速く落ちていく。
前にパパと地球儀を見た後に、パパが地球の裏側に出かけるのが悲しかったことを思い出し、きっとこのまま落ちて地球の裏側の遠いところへ行くのだと思った。
「きっと泣いちゃうな、大好きなパパとママと離れちゃうんだもの」
ふわりと落ちたところはまっくらくらで、柔らかいのか硬いのか、白いのか黒いのかぜんぜんわからない。
少したつと見えてきたのは長い通路のある広間とカーテン。
カーテンの陰には小さな扉。鍵穴から見ると綺麗なお庭が見えてきた。お花がたくさん咲いていて、みんなきらきら光ってた。ママにあげたら喜ぶかしら、と思った。
「行ってみたいなぁ」アリスはそう思って扉を押した。だけどどうやっても開かない。
気がつかなかったけど、大きなガラスのテーブルが見えてきて、鍵はその上にある。
「どうやって取ったらいいのかしら?」
小さな頃に木登りをしたことがあるけれど、それはパパとママが見守ってくれたからできたこと。それにもうお姉さまなんですもの、木登りはしないの。
そのうえこれはガラスだからきっと滑ってしまうでしょう。
まわりを見ると、さっきはなかった(と思う)木のおもちゃ。小さな頃に遊んだキッチンセットみたい。
よく見ると、一つのケーキが置いてある。ママがつくってくれたのかしら?そう思って手に取った。そこには「わたしを食べて」とチョコレートで書いてある。甘くていいにおいがして、ちょっとお腹がすいていたアリスは一口ぱくりと食べて見た。
すると急に壁がゆらゆら動く。
驚いて見渡すと、どうやら愛ちゃんが大きくなったみたい。ガラスのテーブルがちょうどいい大きさになっているもの。
テーブルの上には古い鍵が一つ。手にとって、それからかがんで小さくなった扉の穴に入れて見ると、上手く入ってくるりと回った。
「これでお庭に行けるのね」
アリスは喜んだけれど、身体が大きくなって扉から出られなくなっていた。
できるだけ体を丸めてみたけれど、小さくなりそうもなかった。
そこへちいちゃなネコがニャーと鳴いて走ってきて、さっき開けた扉を抜けて出て行った。
「待って、ネコちゃん」
呼んでもネコは戻ってこない。一人になって、アリスは悲しくなってしまった。だって大好きなパパもママもいないし、ネコは扉を通ってどこかへ行ってしまったし、アリスはどこへも行けない。
ぽろり、と涙がこぼれた。ぽろり、ぽろりと止められなくて、次々に涙が流れた。
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